薬剤師の業務は、薬剤師法で次のように定められています。 |
薬剤師法第1条 薬剤師は、- 調剤
- 医薬品の供給
- その他薬事衛生
をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
薬剤師の代表的な業務は「調剤」です。薬剤師法では、原則として薬剤師でなければ「調剤」を行うことはできません。このような調剤業務は、病院薬剤師や薬局薬剤師が行っています。
調剤とは「医師や歯科医師などの”処方せん”に基づいて、処方された薬を処方された分量を計って、患者さんの病気を治療する薬剤を調整する」ことです。
しかし、ただ医師の処方せんどおりに薬を正確かつ迅速に調製するだけでは十分とはいえず、現在の「調剤」は、薬の有効性、安全性を確保して適正な使用を推進するために次の様な業務も含めた一連の任務です。
- 薬剤服用歴(薬歴)との照合や患者さんとの対話等により処方された薬に関するアレルギー反応の恐れの有無、副作用や相互作用、重複がないかなどについて確認
- 処方内容に疑問点があれば、処方せんを出した医師に照会する(疑義照会)
- 個々の患者さんに合わせた飲み方や使い方の説明(服薬指導)
- 処方せんを出した医師にも必要な情報を提供する
街の薬局薬剤師も、薬局の調剤室内での調剤業務に加えて、寝たきりとなった在宅患者さんの家庭を訪問しての服薬指導や薬の管理指導などを行う在宅医療業務、今後は、高齢になっても地域地域で住居・医療・介護・予防・生活支援などが一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築するための一員としての活動も期待されています。
これらの業務は、いわゆる病院薬剤師、開局薬剤師の主な業務です。
製造された医薬品を安全に管理し、患者さんや消費者の方々に届ける任務です。
- 医薬品の製造、輸入、流通、販売などの全てに関わり、医薬品の保存、管理、試験などの薬学専門技術者として、その適正と安全を保つ
- 医薬品の製造・輸入企業、卸売業、薬局・薬店などで仕事をしている薬剤師が、それぞれの立場でこの業務を行い、適正・適切な医薬品の流通を管理し、国民の方々の健康を守り増進させる
薬学の知識に基ついて処理すべき衛生上の次のような事項について、薬剤師が行う任務です。
- 医薬品・医薬部外品・化粧品・及び毒物劇物の製造、輸入、販売、授与、管理、保存、試験など
- 食品衛生及び環境衛生関係の化学的な試験・研究 その他
- 日常生活における薬などの使用に関する相談・助言等
- 薬物乱用防止運動や健康増進に関する運動などへの参画
これらの業務は、あらゆる部門で従事する薬剤師に該当するもので、それぞれの立場でその任務に当たっています。
薬剤師は大学薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格して与えられる国家資格であり、医薬品全般について幅広い知識・技術を持つ「薬の専門家」です。
平成18年度入学者からは、薬学部も医学部、歯学部、獣医学部と同じく修業年限が6年制となり、薬剤師国家試験を受けるためには6年制を卒業することが必要です。(研究者養成のための4年制もあり。)
病気の治療や予防、健康の維持などのために、薬は私たちの生活に欠かせないものです。病気やけがで、病院や診療所(クリニック)にかかって薬や処方せんをもらったり、体調がすぐれないときに街の薬局・薬店で大衆薬を購入したことがきっとあると思います。
こうした薬が製薬企業で作られ、医療機関や薬局・薬店を経由して消費者の皆さん方の手に届くまでのすべての過程で、薬の専門的として関与しているのが薬剤師です。
また、薬剤師は、医療機関や薬局だけでなく、製薬企業やその他の化学薬品などを製造する企業などの工場や研究部門、医薬品などの卸、小売り販売業、国や都道府県・市町村などの行政機関で薬事、食品、環境関係の行政や試験研究部門、学校など様々な分野で薬学・化学の専門的知識・技術を生かして活躍しています。
また、大規模災害時には、被災自治体からの要請に基づいたり、災害を受けていない地域からボランティア薬剤師として参加し、救護所や避難所などで医療チームの一員として薬剤師の知識経験を生かした活動を行っています。
病院の薬剤師
- 処方箋に基づく内服・外用・注射薬の調剤や適正な在庫管理
- 患者さんへの適切な薬の飲み方の説明や指導
- 薬物相互作用や有効性・安全性の確認など
- 医薬品情報提供、相談応需
- 院内感染防止・がん治療等チーム医療への参画
- 病棟薬剤業務を介した処方設計への関与
など | 製薬企業の薬剤師
- 医薬品の製造に関する責任者として製造現場で製造管理や品質管理を行う
- 研究分野での新薬の開発研究など
- 医薬品に関する様々な情報の収集・管理
- 医療機関や薬局を訪問して、使用する医師や薬剤師が適切に使用や販売ができるよう専門的な情報の提供
など | 薬局の薬剤師 - 医師等の処方箋に基づく薬の調剤
- 患者さんが複数の医療機関にかかり処方箋をもらった場合の重複投薬チェックや市販の薬との飲み合わせチェク
- 服薬状況をまとめた記録の作成
- 寝たきりの患者さんの家を訪問し、服薬指導や管理指導などを行う健康相談
- OTCの販売など薬の店舗販売業の薬剤師と同じ業務
など | 行政機関の薬剤師
- 薬事指導・監視、薬物乱用防止、献血の推進、麻薬関係業務
- 食品衛生、食中毒発生時の調査
- 環境衛生、水質検査、廃棄物衛生
- 衛生研究所や環境研究センターなどの試験研究機関での試験・検査・研究
など | 薬店、ドラッグストアー等の薬剤師- OTC(市販薬、一般用医薬品等と言う。)の販売やセルフメディケーション(自己治療)の支援
- 第一類医薬品の説明販売
- 家庭用医療機器などの販売
- お客さんの症状、ニーズ、体質を考慮し適切な薬を推奨したり、症状等によっては医療機関を受診勧告
など | 卸売業の薬剤師
- 医薬品の保管・販売の責任者として、適正な保管、販売管理や品質管理
- 医薬品等に関する様々な情報の収集・管理使用する医師や薬剤師が適切に使用や販売ができるよう専門的な情報の提供
など | 学校薬剤師 - 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与する
- プール水質や教室照度などの学校環境衛生検査
- 児童生徒等の心身の健康に関する健康相談
- 児童生徒等に対する保健指導
- 薬の正しい使い方などの指導
など |
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| 処方せんに基づく薬の調整 ・薬の副作用や併用(飲み合わせ)による弊害などのチェック ・患者さんに対して適切な薬の飲み方の説明や指導 ・服薬状況等をまとめた薬歴(薬剤服用歴)の作成、管理 ・入院患者さんの病床へ出かけて直接患者さんに対しての 服薬指導や副作用が出ていないかなどについてチェック |
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市販薬では効果が得られない、市販剤形のままでは使用できないなど、薬物
治療上のニーズに応じて、個々の患者さんに合わせて院内製剤を調整するこ
と。院内製剤によって治療効果を上げ、患者さんのQOL(生活の質)の向上
に繋がる
- 内服薬、外用薬から注射薬などすべての剤形が対象
- 疾病に関する知識に加えて薬剤師の幅広い薬学的知識と技術を結集して、有効性、安全性、安定性の面についても配慮している
- 患者さんの検査値や、年齢、体重、発熱、食事摂取など様々な状況を考慮し、処方された薬についての配合禁忌(混ぜてはいけない薬)、投与量、投与速度、投与期間などのチェック
- 入院患者さん一人一人が使用する注射薬を1回分ずつ調剤
- アンプルやバイアルに入った注射薬を点滴の中に混ぜ、患者さんへすぐに使用できるようにする
- がんの化学療法薬や高カロリー注射薬等の安全、衛生的な混合調製
抗がん剤には多くの注射薬があり、目や皮膚に触れないような注意が必要であ
り、薬の専門家である薬剤師が、防護衣を着用し安全キャビネットやクリーン
ベンチを用いて安全、無菌的に混合調剤
- 救急救命センター等のある病院においては、刻々と変化する病状に応じた最適な薬剤の選択や投与量・投与方法を確認して調整
- 救命救急チームの一員として薬の品質・在庫管理を含めて適正な薬物治療の提供
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- 薬に関する様々な情報を収集し、評価して医師、看護師、他の医療従事者や患者さんに提供する
- 院内での副作用発生の情報の収集・評価、必要な報告等
院内で新たに見つかった副作用や、重大な副作用は厚生労働省に報告する
→ 厚生労働省はこれらをまとめ“安全性情報”を出し、医療機関や薬局で情 報共有
→ 医薬品の安全使用に繋がる
7 治験(「くすりの候補」を用いて国の承認を得るためのデータを集める臨床試験) |
治験における薬剤師の役割
- 薬の専門家として、治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator 治験協力者として被験者ケアなど治験実施などをサポートする)を務める
- 医薬品の製造販売承認を得るための新薬の臨床試験
- 被験者の倫理性、安全性を担保、治験薬を適切に管理、調剤すること
- 治験に関わる全ての人達がGCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準)等のルールを逸脱しないように監督すること
- 質(信頼性)の高いデータを迅速に供給し、優れた新薬を臨床現場に早く供給できるよう支援すること
| 患者さんに適切な薬物療法が行われ、かつ患者さんが安心して薬を使用できるよう、医師や看護師をはじめとする多くの部署と連携して次のようなことを行っています。 |
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- 入院患者さんまたはご家族と面談し、入院時の持参薬、市販薬、健康食品等の内容、服薬状況、飲み合わせ、アレルギー歴、副作用歴等を確認する
- 薬の使用前には疾患や症状、年齢、体格、腎臓や肝臓の機能などを確認した上で、投与量、投与速度に問題がないか、注射薬と内服薬との組み合わせが問題ないかを確認
- 薬を使用する際には効果や飲み方(使用方法)、起こり得る副作用とその対処法の説明を患者さんまたは家族に行う
- 薬の使用後には効果が出ているか、副作用が出ていないかを確認し、その内容を医師に伝え、薬の処方設計や提案をする
- 退院時には退院後の生活に合わせた薬の飲み方、服用時間等について説明する
最近の薬物療法の進歩は目覚ましく、「専門家の薬剤師がより専門的知識を充実して臨床現場に貢献してほしい」という要望が強くなり、ある薬物療法の分野で臨床経験を積、研究を行い、日本病院薬剤師会や関連学会の認定を受けることにより認定薬剤師や専門薬剤師(スペシャリスト)として医療の現場で活躍している。
日本病院薬剤師会は次の5領域で専門薬剤師を認定している。
1:がん、2:感染制御、3:精神科、4:妊婦・授乳婦、5:HIV感染症
病院や薬局など主な従事先別の薬剤師の具体的な仕事内容 |
薬局は、調剤と薬の販売を併せ行うことのできる場所であり、薬局の薬剤師は主に次の様な業務を行っています。
| - 医師の処方せんに基づく薬の調整
- 薬の副作用や飲み合わせによる弊害などのチェック
- 特に複数の医療機関からの処方せんを受付けた場合の重 複投薬のチェック
- 患者さんに対して適切な薬の飲み方の説明や指導
- 服薬状況等をまとめた薬歴(薬剤服用歴)の作成、管理
(調剤業務は、病院等の薬剤師業務とほぼ同じ。) - 市販の薬やサプリメントなどとの飲み合わせのチェック
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薬剤師の役割としては、在宅患者さんへの最適かつ安全・安心な薬物療法の提供であり次の様な業務があります。- 往診した医師の処方せんに基づき、患者さんの状態に応じた調剤(一包化など)
- 在宅で療養している患者さんの家庭を訪問し、飲み方の説明や薬の管理指導・支援
- 在宅患者さん用にクリーンベンチや無菌室での調剤
- 介護保険についての相談窓口
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| - 「薬局製剤業務指針」に収載された処方に基づいて、製造販売が許可された薬局製剤の製造販売
- 患者さんの訴えに応じて、薬局で製造販売することが許可されている漢方薬の調合・販売
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- 市販薬の販売を通じてのセルフメディケーション(自己治療)の支援
お客さんの症状やニーズを聞き、その人に合った適切なOTC(市販薬、一般用医薬品等と言う。)の販売- 薬剤師による第一類医薬品の説明販売(薬剤師でないと販売できない。)
- 症状等によっては医療機関を受診するよう勧める
- 薬や健康一般に関する相談を受ける(健康づくり支援薬局、健康サポート薬局)
薬店やドラッグストアーの薬剤師は主に次の様な業務を行っています。- 市販薬の販売を通じてのセルフメディケーション(自己治 療)の支援お客さんの症状やニーズを聞き、その人に合った適切なOTC(市販薬、一般用医薬品等と言う。)の販売
- 第一類医薬品の説明販売(薬剤師でないと販売できない。)
- 家庭用医療機器などの販売
*お客さんの症状やニーズを聞き、体質を考慮しながらその方に合う適切な薬を推奨したり、症状等によっては医療機関を受診するよう勧めることも求められ、コミュニケーション能力が重要- ドラッグストアーの中には調剤室を併設し薬局の許可を取っている店舗もあり、そこでの調剤業務は薬局と同様
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医薬品を製造する企業の薬剤師は主に次の様な業務を行っています。- 製造工場の管理薬剤師として、医薬品の製造管理や品質管理
- 研究所や研究部門で新薬の開発研究や品質改良研究など
- CRA(Clinical Research Associate)臨床開発モニターとして、臨床試験が基準に沿って正しく実施されているか検査
- CRC(Clinical Research Coordinator)治験コーディネーターとして、治験の現場で直に患者さんに新薬に関する情報提供や治験内容の説明
- MR(Medical Representative)医薬情報担当者として、医薬品の品質、有効性、安全性などに関する情報の提供、収集、伝達
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| 医薬品卸売業の薬剤師は主に次の様な業務を行っています。- 管理薬剤師として、医薬品の適正な保管・販売管理や品質管 理等
- 使用する医師や薬剤師が適切に使用や販売できるよう専門的 な情報の提供
- 医療機関や薬局などからの、医薬品等に関する問い合わせへの対応
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国、都道府県や市町村などの行政機関の薬剤師は主に次の様な業務を行っています- 国の機関では国の薬事行政に携わり、例えば薬事に関する 法令作りや、医薬行政施策の企画実行などを担当
- 麻薬取締官として麻薬・覚せい剤などの取り締まりや薬物乱用防止活動
- 薬事衛生、食品衛生、環境衛生、公害・環境保全などに関する行政指導や監視など
(薬局開設許可事務や薬局、医薬品店舗販売業店舗における医薬品の適正な販売等の指導監視業務食品営業許可事務や飲食店等に対する指導監視業務 など)- 試験研究機関で医薬品、食品、大気、水質などの検査や研究
(衛生研究所、環境研究センターなどで試験検査や研究業務) | |
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| 学校薬剤師は、学校保健安全法第23条により、大学以外の全国の幼稚園、小中高、盲学校、聾学校、養護学校、などに置くこととされており、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事するとされています。病院や薬局などの薬剤師が県や市町村の教育委員会から委嘱されて務めています。主な職務の内容は、学校薬剤師の職務執行の準則に基づき・学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与する- 飲用水、プ-ルの水質検査や教室の照度換気状況の測定など
- 水道、水泳プール、給食施設及び設備などの維持、改善に関する指導及び助言
- 児童生徒等の心身の健康に関する健康相談
- 児童生徒等に対する保健指導
- 学校で使用する医薬品、毒物・劇物などの管理指導や検査鑑定
- 児童・生徒や教職員に対する薬の正しい使い方などの指導
- 喫煙・飲酒・薬物乱用防止などについての指導助言などがあり、環境衛生・薬事衛生・公衆衛生などについて薬剤師としての専門知識・技術を生かして、学校に対して指導助言を行い、児童生徒や職員の健康の保持増進を図る重要な職務です。
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地震・台風などの大規模な災害が発生した場合は、人命救助に加え、負傷者への救護活動のために被災した市町村では、救護所や避難所が設置され、医師、看護師に加えて地域の薬剤師も医療チームに参加して救護活動を行います。
災害時の対応について専門的知識技術を身に着けた薬剤師の「災害薬事コーディネーター」が、県や市町村医師会等の医療関係団体と協力して災害時対応を行います。
また、救援物資集積所で医療品等の仕分けや保管管理、医薬品等の避難者への配布、薬や健康などの相談に応じたり、避難所での衛生管理、飲料水の検査など薬剤師の知識・技術を生かした活動を行います。
高知県薬剤師会では、「薬局・薬剤師の災害医療救援活動マニュアル」に基づき、全会員薬剤師が災害時にそれぞれの地域で役立つことができるよう努めています。